海外ビジネス会食でスマートに テイスティングの基本マナー
はじめに
海外でのビジネス会食では、単に食事をするだけでなく、ビジネスパートナーや顧客との関係構築も重要な目的となります。そうした場で、ワインやその他の飲み物、料理の一部について「テイスティング」を求められる機会があるかもしれません。テイスティングは、その品質を確認し、同席者やサービス提供者への配慮を示す行為です。スマートなテイスティングマナーを知っておくことは、スムーズな会食の進行と自身の信頼性につながります。
テイスティングとは?その目的
ビジネス会食におけるテイスティングは、主に提供される飲み物(特にワイン)や料理が、オーダーしたものと合っているか、品質に問題がないかを確認するために行われます。
一般的な目的は以下の通りです。
- オーダー内容の確認: 注文したワインや料理が正しく提供されているかを確認します。
- 品質の確認: 特にワインでは、劣化(コルク臭など)がないかを確認します。料理の場合、温度や最低限の品質に問題がないかを見ます。
- ホストへの配慮: ホストとしてゲストに提供する前に品質を確認する、またはゲストとしてホストの選んだものに対する敬意を示す側面もあります。
重要なのは、テイスティングは好き嫌いを判断する場ではないということです。品質に明らかな問題がない限り、受け入れるのが一般的です。
ワインのテイスティングマナー
海外のビジネス会食でテイスティングを求められる機会が最も多いのはワインでしょう。一般的な流れとスマートな振る舞いを解説します。
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ボトル・ラベルの確認:
- サービス担当者がボトルを持ってきたら、まずラベルを見て、注文したワイン(銘柄、年号など)と合っているかを確認します。
- 問題がなければ、軽く頷くなどして承認の意思を示します。
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グラスに注がれる:
- 少量(一口分程度)がテイスティング用にグラスに注がれます。
- サービス担当者が注いでいる間、グラスを持ったままにせず、テーブルに置いたままにします。
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テイスティングの手順:
- 見る (Sight): グラスを傾け、ワインの色、透明度、粘性などを確認します。光にかざすと見やすい場合があります。不自然な濁りがないかなどを見ます。
- 香る (Smell): グラスを軽く回して空気に触れさせ(スワリング)、香りを立たせます。グラスに鼻を近づけ、香りを嗅ぎます。不快な匂い(カビ、湿った段ボールのようなコルク臭など)がないかを確認します。
- 味わう (Taste): 少量口に含みます。口の中で舌の上に転がしたり、軽く空気を含ませたりして、味や風味、舌触りを確認します。品質に問題がないか(極端な酸味、不快な雑味など)を判断します。飲み込まずに、ワインクーラーなどに用意された容器(スピトゥーン)に吐き出すこともありますが、ビジネス会食の場では飲み込む方が多いかもしれません。
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意思表示:
- テイスティングの結果、品質に問題がなければ、サービス担当者の方を見て、軽く頷くか、「結構です」「これでお願いします(It's fine / That will be fine.)」などと伝えます。
- もし明らかな品質の問題(強いコルク臭など)がある場合は、正直に伝える必要があります。しかし、これはあくまで「問題があるか」の判断であり、「好みではない」という意味ではないことに留意してください。伝える際は、「申し訳ありませんが、少し香りに問題があるように感じます(Excuse me, but I detect a slight issue with the aroma.)」のように丁寧な言葉遣いを心がけます。
ワイン以外のテイスティング
ビジネス会食の場では、ワイン以外にもテイスティングの機会がある場合があります。
- オリーブオイル: パンと一緒に出されるオリーブオイルについて、数種類の中から選ぶ際にテイスティングを勧められることがあります。少量をそのまま、またはパンにつけて風味を確かめます。
- 特定の料理素材: 稀に、特定の食材(チーズ、ハムなど)について、風味の違いを確かめるためにテイスティングする機会があるかもしれません。
基本的な流れはワインと同様に「見る」「香る」「味わう」ですが、より簡略的に行われることが多いでしょう。ここでも重要なのは、品質に問題がないかの確認であり、好き嫌いの表明ではないという点です。
多忙なビジネスパーソン向け要点
- テイスティングは品質確認の儀式と捉え、過度に身構える必要はありません。
- ワインの場合: ラベル確認 → 少量注がれる → (見る) → (香る) → (味わう) → 問題なければ頷くor承諾の言葉を伝える。
- もし品質に問題があれば、丁寧な言葉遣いでサービス担当者に伝えます。
- 問題がなければ、「おいしいですね」といった感想を伝える必要はありません。承諾の意思表示だけで十分です。
- ワイン以外のテイスティングも、同様に品質確認が目的です。
まとめ
海外でのビジネス会食におけるテイスティングは、形式的な側面もありますが、提供されるものへの敬意と、スムーズな会食を円滑に進めるための重要なプロセスです。ワインを中心に、基本的な流れとスマートな振る舞いを身につけておくことで、自信を持って会食に臨むことができるでしょう。多忙な中で、これらの要点を押さえておくことは、あなたのビジネスシーンでの立ち振る舞いに品格と信頼性を加えることにつながります。