海外ビジネス会食で役立つ 和食の基本マナー
はじめに
海外でのビジネス会食や、海外からのお客様を日本にお迎えする際、和食の席でのマナーは大変重要になります。洋食とは異なる独特の作法があり、これを知っているか否かで相手に与える印象も変わってまいります。特にフォーマルな場では、基本的なマナーを押さえておくことが、円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築につながります。
このセクションでは、海外でのビジネスシーンやフォーマルな和食の席で役立つ、基本的なマナーの要点をご紹介します。
箸の扱い方
和食における箸は、食事の中心的道具です。正しく美しく扱うことが、品格を示す上で重要視されます。
- 箸の持ち方: 基本的な正しい持ち方で、食材を安定して掴めるように練習しておくと安心です。
- 箸置きの利用: 食事中に箸を置く際は、箸置きを利用するのが一般的です。箸先を左側に向けて置きます。箸置きがない場合は、箸袋を折って代用することも可能です。
- 忌み箸(いみばし)の禁止: 箸に関するタブー行為を避けることが大切です。代表的なものとして以下が挙げられます。
- 渡し箸: 器の上に箸を橋のように渡して置くこと。
- 刺し箸: 料理に箸を突き刺して食べること。
- 迷い箸: どの料理を食べようか迷って、料理の上で箸先をウロウロさせること。
- 拾い箸: 箸から箸へ料理を受け渡すこと(火葬後の骨上げを連想させるため、特に避けるべき行為とされます)。
- 涙箸: 箸先から汁などをポタポタと垂らすこと。
これらの忌み箸は、同席者に不快感を与える可能性があるため注意が必要です。
器の扱い方
和食では、器を手に持っていただくものと、置いたままいただくものがあります。
- 手に持つ器: ご飯茶碗や汁椀、小さめの小鉢などは手に持っていただくと綺麗に見えます。器を軽く支えるように持つのが一般的です。
- 置いたままの器: 焼き物皿や煮物鉢、刺身皿など、大きめの器はテーブルに置いたままいただきます。
- 蓋物の扱い: 蓋付きの椀物は、いただく際にまず蓋を開けます。蓋を開ける際は、両手で丁寧に持ち、静かに開けて椀の縁に溜まった水分を器の中に戻します。開けた蓋は、椀の右側または左側に裏返して置くのが一般的な作法とされます。食べ終わった後は、元の通りに蓋を閉めます。
汁物のいただき方
味噌汁やお吸い物などの汁物は、蓋を開けたらまず香りを楽しみ、それから静かに音を立てずにいただきます。椀に口を付けて、箸で具材をいただきながら汁を飲むのが一般的な作法です。
ご飯と味噌汁の位置
配膳では、手前左にご飯、手前右に味噌汁が置かれることが一般的です。いただく際もこの位置を意識しておくとスムーズです。
その他の料理に関する要点
- 焼き魚: 一般的には左から右へ、上身からいただくのが綺麗に見えます。裏返すのはせず、中骨を外して奥にまとめ、下身をいただくのが一般的なマナーとされます。
- 刺身: 醤油は皿に少量だけ注ぎ、必要に応じて足すのが良いでしょう。刺身全てを一度に醤油に浸けるのではなく、食べる直前に少量つけるのが一般的です。つま(大根の細切りなど)は箸休めにいただくものですが、全て残しても失礼にはあたりません。
- 寿司: 箸でいただくのが一般的ですが、手でいただいても問題ありません(特に江戸前寿司の場合)。ただし、醤油はネタの側に少量つけるのがマナーとされます。軍艦巻きなどは、ガリに醤油をつけてそれをネタに乗せる、という方法もあります。
- 天ぷら: 提供された塩や天つゆ、大根おろしを適切に使っていただきます。複数の天ぷらが盛り合わせになっている場合、手前からいただくのがスムーズです。
会席料理やコースでの注意点
複数の品数が出る会席料理などでは、提供された順に温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちにいただくのが良いとされます。会話を楽しみつつも、料理への配慮を示すことが大切です。
まとめ
海外でのビジネス会食やフォーマルな場での和食のマナーは、細部にわたるものが多いように感じられるかもしれません。しかし、これらの基本的な要点を押さえておくことで、自信を持って食事の場に臨むことができます。相手への敬意を示し、場にふさわしい振る舞いを心がけることが最も重要です。全ての作法を完璧にこなすことよりも、丁寧に、そして周りの方と気持ちよく食事を共にするという意識を持つことが、海外でのビジネスを円滑に進める上での助けとなるでしょう。